* リーマン×女子高生 ―初めてのデート― *




さて、ここに一本の傘があります。
それを持っているのは一人の少女。その隣には一人の男。
外ではザアザア雨が降っています。

「……雨、すごいね」

少女が言いました。

「ああ…」

と、男は返します。

「……傘、一本しかないね」

少女が、やや遠慮がちに言いました。

「ああ…そうだな」

と、男も遠慮がちに返します。

「て、天気予報って最近当たらないよねー。今日だってホントは曇りだって、」

無理に作った明るい声で少女は話し始めました。
それに男は無言で返し、けれど少女は更に続けます。

「でも念のため持ってきてて良かったー。せっかくの初めてのデート、だし…さ、」

最後は消え入りそうな声で少女は言いました。両頬を真っ赤に染めるおまけもプラスして。
それに対して男は、

「そうだな」

ただ一言だけ。
繰り返しますが、傘は少女が持っている一本のみですし、雨は一向に止みそうにもありません。

「………」
「………」

しばらくの間、無言が続きます。
どうやら考えている事は二人共同じ様子です。

「……行くか」

すると突然、男が言いました。

「えっ、ど、どこに?」

驚いて少女は訪ねます。

「駅」

男は簡潔に言い、

「あ…そ、そうだね、そうだよね。ずっとここにいるわけにもいかないしね」

と、ややどもりながら少女は答えました。

「ホラ貸せ」

そう言うと、男は少女の手からピンク色をした可愛らしい折り畳み傘を奪い取ります。

「行くぞ」

そして傘を広げ、少女を振り返り言いました。

「あ、うん…」

それに頬を染め少女は頷き、一歩足を踏み出します。
しかし、

「オイ……そんな離れてっと濡れるぞ」

男が振り返って言いました。
少女が足を止めたのは、男と人2人分くらいの距離がある所でした。
男は訝しげに見やると、少女は恥ずかしそうにその顔を真っ赤に染め俯いてしまいました。

「………」
「………」

再びしばし無言が続きます。
そして、先にそれを破ったのは男の方でした。

「あ〜」

ガリガリと頭をかき、男は一度呟くと、

「わっ」

無理矢理少女の手首を掴み、隣へと引き寄せました。
その際、男の二の腕に肩がとん、とぶつかり少女の心臓が鳴りましたが、男は気付いていません。
そんな男も、

「そんな顔されたらこっちだって照れんじゃねーか」

なんて思いましたが、勿論そんな事は口に出したりしませんでした。




そしてその後。
顔中真っ赤にした少女と目元を少しだけ赤く染めた男が、一本のピンク色をした傘の下でお互いに顔を背けながら歩いていたのが目撃されたとかされなかったとか。

二人が出会って、3ヶ月が経った頃の事でした。