あかりをつけましょ。
おはなをあげましょ。
今日は特別、女の子の日。
* ヒナマツリにドッキドキ! *
桃色のそれに袖を通し、髪を結い上げたサクラに一行は驚いた。
「うわーサクラきれい!!」
「似合うねーサクラちゃん」
「そ、そうですか…?」
と、顔を同じ桃色に染めながらサクラは言う。
着物、という異国の慣れない衣服を纏っている彼女は、普段の穏やかな雰囲気と違ってとても可憐だ。ヤマトナデシコだね!とモコナが言ったが、黒鋼以外その意味は分からなかった。
「中々良いじゃねぇか」
「黒鋼さん…」
サクラの後ろから出て来たのは長身の男。その手には細長い布状の紐を何本か持っていた。
* * *
「今日はひな祭りだからコレあげるわ」と、いつもの様に魔女が送って来たモノ。
侑子曰く「ひな祭りセット」というモノらしいが、サクラを始め、皆同様に首をかしげる。
と、その中で唯一意味の分かる黒鋼がひな祭りとはなんぞや、と言葉少なに説明をし、事態を飲み込んだファイはその祭りの食事の用意を、小狼はその手伝いを、モコナは昼寝を、そして黒鋼はサクラの着付けを担当したのだった。
* * *
「ったく何で俺が姫の着付けなんざ…」
「だってぇオレ達その服の着方分からないしー。黒様の国のと似てるんでしょー?」
「だからって女のなんかやったことねぇぞ」
まぁ何とか形にはなったけどな、と着物姿のサクラを見て言う。
途端、黒鋼と視線が合ったサクラはぱっと顔を背けてしまった。目元が微かに赤くなっているのは気のせいだろうか?
それに気付いたモコナが、
「……もしや黒鋼、サクラに何かした?」
「あ?」
「着替えてる時、えっちなこととか〜、」
「ばっ」
「えぇぇぇええ〜〜黒ぽんそんなことしたのぉ〜〜〜〜!!!??」
「なっ、」
「うわっ最低です黒鋼さん!」
「あっこらてめっ、小僧の真似すんな!!!」
きゃーきゃー、と楽しそうに逃げるモコナとファイと、そしてそれを剣を振り回しながら追い掛ける黒鋼はいつものことだ。
途端に2人きりにさせられてしまった小狼とサクラは自然と目を合わす。そして、
「ち、違うからね!」
「え?」
「ほんとにほんと、何も無かったのよ!」
「あ…。分かってますよ。黒鋼さんはそんな事をする人じゃないです」
にこりと笑ってそう言う小狼に、ホッと安心したようにサクラは微笑み、そうして己を見渡して言った。
「あのね…とっても優しかったの。この服って本当はお腹とかをきつく締める物なんですって。着せてもらってる時、黒鋼さん何回も『大丈夫か?』って聞いてくれて。全然苦しくないの」
すごいよね、とサクラは笑う。
そして少しだけ目を伏せ、恥ずかしそうに切り出した。
「…ど、」
「え?」
「どう、かな…。これ」
「あの…」
「似合って、る…?」
「え、と……」
「…だめかなぁ?」
「そっそんなこと!」
「えっ、」
「そんなことないです!すごく似合ってます!」
「ほんと?」
ぶんぶんと思いきり首を縦に振る小狼に、同じように顔を真っ赤に染め、サクラは心から嬉しそうに笑った。
* * *
その夜。
「ねーねー」
「何だ」
「魔女さんからの荷物整理してたら、も一つ服が出てきたんだけどー」
「あ?姫のだけじゃねぇのか」
「あ、何かメモがあるー…えーと『これはファイ、アナタが着なさい。by侑子』」
「はぁ!?」
「うわぁ、魔女さんオレの分まで用意してくれたんだー」
イイ人だねぇ、とへにゃんと笑うファイに、
「ばっ…それ女物じゃねーか!」
黒鋼は思いっきり叫んでいた。
その言葉にファイはきょとん、と目を丸くする。が、しかし次の瞬間くふんと笑うと、
「くーろたん、きーせーてー♪」
「……言うと思ったぜ」
「だめー?」
「に、決まってんだろこの阿呆!誰がやるかそんな事!!」
「あ、このメモ裏にも何か書いてあるー。『着て写真を撮って送りなさい。さもないと、バレンタイン5倍返しにするわよ』……だってー」
勝った、と言わんばかりのファイの笑顔に、この日本気で黒鋼がキレるのは、この後すぐの事である。
<08.0701>